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レポート「こども映画教室教室@ヨコハマ2015」

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「こども映画教室@ヨコハマ2015」の3日目に見学にきてくださった、三重県立鳥羽高校の中川弘文校長先生が、感想を送ってくださいました。ご本人の了承を得て、こちらに載せさせていただきます。学校の先生にみていただいて、このような感想をいただいて、本当に励みになります。どんな子にもこのような体験をしてもらいたいなってつくづく思います。

「こども映画教室@ヨコハマ 2015」 レポート

2015年8月15日 鳥羽高校 中川 弘文

とき:2015年7月26日(日) ところ:東京藝術大学横浜校地馬車道校舎

1 こども映画教室とは〜「こども映画教室@早稲田エンパク2014みんなの感想文集」より

・2004年に金沢で始まった「こども映画教室」(金沢コミュニティシネマ等主催)では、毎年、映画の仕組みをわかりやすく体験するワークショップや、さまざまな名画の鑑賞などを通じ、次世代の文化を担う想像力ゆたかな子どもたちの育成をはかってきました。子どもたちは。正解のない映画づくりや映画鑑賞後のお話会などを通じて、自分とは違う価値観を知ったり、友だちととことん話し合ったり、協力して何かを作り上げる体験をします。そのことは子ども達の想像・創造性を引き出し、コミュニケーション力を高め、自由な発想を生み出します。そして成長し変化を遂げる子どもたちの姿を真剣に見つめるうちに、大人たちもまた感化され、変化していきます。この活動をぜひ他の地域の子どもたちに届けたい、いずれは公立小学校の授業で行いたいという夢を描き、任意団体「こども映画教室」を設立しました。 (代表 土肥 悦子さんの文章による)

・事務局:東京都世田谷区東玉川1−32−23 こども映画教室

2 こども映画教室の見学について 「こども映画教室のすすめ」(土田環編:春秋社)、「映画教室、子どもの成長映る」(土肥悦子:日経新聞記事2014年)等の資料をきっかけにこの活動を知り、今回、土肥代表にお願いして、3日目の活動を見学させていただきました。突然の見学依頼を快く受け入れてくださった土肥代表、平山さん(広報)のご厚意に感謝しています。

3 日程、講師などの概要 1)日程:2015年7月24日(金)〜7月26日(日)   1日目:導入的活動    好きなもの、気になるものを撮る⇒つなぐ(想像で)⇒ストーリーをつくる   2日目:撮影   3日目:撮影・編集・ポスター作り、上映会、まとめ 2)定員:30人の小学生(異年齢の集団、初めての顔合わせを経験するこども) 3)講師:諏訪敦彦(すわのぶひろ)監督:東京藝大大学院映像研究科教授;映画監督      「M/OTHER」(1999)、「不完全なふたり」(2005)、「ユキとニナ」(2009)      スタッフは大学院学生や映像分野で活躍する若者等のボランティアスタッフ

4 当日(26日)レポート 【午前の部】  馬車道校舎を10時前に訪れると、既に子ども達が元気に前日の作業の続きをしていた。受付で土肥代表にご挨拶。代表からは「こどもと一流のアーティスト、映画人が出会うこと」「大人は手出し口出ししない」という「こども映画教室」が大切にしていることが伝えられた。広報の平山玲さんに、当日のおおまかな様子の説明をしていただいた。2日前はまったく会ったこともない、異年齢の子どもたち、そして大人のスタッフが兄弟姉妹、親子さながらコミュニケーションをとっていたことが印象的であった。そして横浜というフィールド、昔は銀行の建物であった白い雰囲気のある東京藝大の校舎がさらにわくわくさせる雰囲気を醸し出していた。

1)諏訪監督によるその日のスタートアップ  諏訪監督が簡潔にその日の活動内容(編集から上映まで)とポイントを説明された。  子ども達の反応はよく(well motivated)、すぐにでも動き出しをしたいような様子であった。   同時にしっかり話をきいて、内容をよく理解していた。

2)編集についてのお話:上映ホールにて ・まずは、すてきな施設に感激した! ・「友だちの家はどこ」(イラン映画)の冒頭の数分間を見ながら、みんなでカットを数える。 ・最初の10回までは声に出して数える。それ以降は各自心の中で数える。 ・諏訪監督からは「いらないところ、失敗したところを削るのではない。」、「写っている念力が大切」「気づかなかったところに宝物あり」、「マイクが写っていたとしても、念力のこもっ  たもの、宝物と思ったら使う」とのお話。なるほどと自分がうなずいてしまう。

3)グループごとに打合せ ・スタッフが15:30までに映画を完成させるということを示して、何をするかを確認 ・スタッフのメモの提示がスマートかつ簡潔 ・メモをとるこどもたちの姿がよい ・いつの間にかグループ内でその日の行動を提案する子どもの姿 ・グループによっては撮影が完了していないところもあり、急い  で作業に入った。

4)こどもたちの様子

・スタッフとこどもの距離感:対等でもあるが、近い!こどもたちにとって安心できる距離。意識してスタッフのみなさんがその距離をとっているのだろう。倒れそうになったら手をさしのべる雰囲気、あるいは倒れたら、起き上がるのに手を貸す雰囲気

・こどもたちひとり一人で興味やこだわりが違う。映像、カメラ、PC、編集作業そのもの、おしゃべりなど、それぞれがこだわりをもっている。どこにでもこだわりを見つけることができるのが素敵である。

・スタッフが先生役でもない、グループで強力なリーダーがいるような様子でもない。

・編集段階ではそれぞれがシーンを移動させて、そのことで大きな変化が起こることに感動する姿が見られた。話し合いの中でしっかり主張する場面もあった。

【上映会】 ・会場の外側にはこどもたちが描いたポスターが掲示されていた。それを背景に子どもの写真を撮る保護者の姿がほほえましい。会場は満員。

・諏訪監督あいさつ  ⇒大人は手も口もださない。介入しない。子どもの純度が高い。  ⇒役割分担についても一切言わない。様々な問題が起き、葛藤が生まれる。

・土肥悦子さんあいさつ  ⇒こども映画教室のこれまでの経緯  ⇒子育てという観点  ⇒おしつけを排除する活動  ⇒「ごっこ遊び」ができるこどもにとって即興演出することは難しいことでなない。  ⇒技術的なことも教えないが、こどもたちが必要に追われてそれなりに工夫する。  ⇒3日間で誰が何を得意としているのかがわかる。お互いに認め合う。  ⇒スタッフは映画のプロ。大人の本気に触れることでこどもが変わる。

・5つの作品の上映のあと、こどもたちとスタッフからのコメントがあった。  ⇒友だちができてよかった。  ⇒(「どうして音楽を入れたの」という質問に)    あったほうがいいと思ったから。ipadでピアノのアプリを使って音楽をつくったの  ⇒スタッフのコメントからは、こどもたちをしっかり見つめ、その個性をしっかり把握し

ている様子が見られた。  ⇒作品はどれものびのびと独創的であった。

5 全体的な感想 ・映画の魅力、映画を視ること、映画をつくること、映画を見せること。これらの活動の中にはこどもたちが大きくなる上で必要な学ぶべきもののほとんどが含まれている。

 ⇒助け合うこと。協力すること

 ⇒相手を理解しようとすること  ⇒自分を好きになること、自信を持つこと  ⇒人をよろこばせること、幸せな気分にすること

・できあがった作品は自尊感情を高めるし、それをみることで自分たちの活動を振り返ることができる。自分たちの活動を振り返り、頭の中で整理することもできる。

・諏訪監督、土肥さん、平山さん、スタッフのみなさんの時折みせるキリッとした厳しい表情から、大人の本気が漂い、活動全体がしっかり計画的に組織されていることも感激した。

6 最後に(いま思っていること〜個人的なおもい)  2014年から鳥羽高校で勤務して、学校や地域に関わる多くの人とお話をさせていただく中で、多くのことを学んでいる。高校生のこどもたちの日々成長する姿から多くの気づきを得るのは言うまでもない。特にこの1年間はこどもたちが主体的に学ぶにはどうすればいいのかを考え、あえて学校現場から離れて外の世界を視ることにこころがけた。5月末には東大駒場キャンパスのアクティブラーニングスタジオという施設を見学させていただき、物理的な学習環境について考えることができた。そして今回の「こども映画教室」であった。  三重から横浜に向かう道中に、「プレイフル・シンキング」(上田信行著:宣伝会議:2009年)を読んできた。上田先生(同志社女子大現代社会学部こども学科)は教育工学、学習環境デザインの専門家。どうすればこどもがわくわくと学ぶことのできる場を創りだせるのかを研究されている。プレイフル(playful)とは「物事に対してワクワクドキドキする心の状態」だそうで、まさにこども映画教室にかかわる大人とこどもたちの状態だと後で思った。上田先生は絵や図で表現すること、つまりアウトプットのよいところについて「可視化したり言語化することで自分なりにメタ認知できるだけでなく、他者とも共有できるようになること」とし、「お互いの脳みそをいったん目の前に出してメタ認知することで考えるという行為がよりプレイフルに活性化される」と指摘されている。前述の「こども映画教室のすすめ」とこの本と今回の見学がしっかり頭の中でつながったような気がした。同時に何かしら新しい視点で勇気を持って高校生に学びを提供できるのではないかと考えることができた。2015年度後半、がんばってみようと思う。(おわり)

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